日本の自殺件数は毎年2万人を超えており、世界の自殺率(人口当たりの自殺数)ランキングは、世界第6位です。(2017年)特に女性は世界第3位です。
これは日本の大きな問題であり、今後早急に改善、解決すべき点でもあります。では、なぜ人間は自殺という行為にたどり着いてしまうのでしょうか。「自殺論」がヒントになりそうです。
「自殺論」とは、フランスの社会学者エミール・デュルケームはが、1897年出版した書籍で、この研究において自殺を個々の人間の心理から説明するのではなく、3つの社会的要因から説明しています。
今回はデュルケームが主張する、自殺を引き起こす3つの社会的要因をまとめ、わかりやすく解説しています。
目次
1. 集団本位的自殺
2. 自己本位的自殺
3. アノミー的自殺
1. 集団本位的自殺
「集団本意的自殺」とは、個人の自由が極端に少なく、自分が所属する集団の価値観や規範に対して、服従しなければならない未開社会に見られる自殺です。
この社会では、献身や自己犠牲が強調される伝統的な道徳構造を持っており、老衰したり,名誉を傷つけられた者が自発的に死を選んだりします。
さらにその延長線上にある軍隊組織に見られる自殺・殉死などもこれに該当します。(具体例:一般人よりも軍人のほうが自殺率が高い)
2. 自己本位的自殺
「自己本位的自殺」とは、過度の孤独感や焦燥感などにより個人が集団との結びつきが弱まることによって起こる自殺です。個人主義の拡大に伴って増大してきたものと言えます。
農村よりも都市、既婚者よりも未婚者の自殺率が高いなどと言ったように、個人の孤立を招きやすい環境において自殺率が高まりやすいです。
このタイプの自殺は、現代の日本社会に多いタイプです。そのため、日本社会では、つながりを感じることのできる新たなコミュニティの形成などが急がれています。
3. アノミー的自殺
「アノミー的自殺」とは、社会的規則・規制がない状態において起こる自殺です。集団・社会の規範が緩んで、より多くの自由が獲得されたことにより、膨れ上がる自分の欲望を果てしなく追求し続け、実現できないことに幻滅し虚無感を抱き自殺へ至ってしまいます。
つまり、規制がない状態では、自らの欲望に歯止めが効かなくなってしまい、自殺してしまうもので、不況期よりも好景気のほうが欲望が過度に膨張するので自殺率が高まる傾向にあります。